日本だけ成長から取り残されていて、相対的に貧しくなっているという記事を読んで、OECD加盟国の平均年収の推移を調べてみた記事を先日書いた。
その後、こんな記事に出会う。バンコクの物価上昇が激しく、リタイアでバンコクに移住した年金受給者が生活苦に陥っているという話で、記事内ではラーメンや日本食レストランは日本よりも高く、日系スーパーで買い物すると1回の買い物で1万円かかるという驚きの内容が書かれている。
例えば、バンコクでラーメンを注文した場合、数年前であれば200バーツ(約700円)ぐらいだったのが、今では300から400バーツ(約1000円から約1300円)と、2倍近くにまで跳ね上がっている。バンコクでもお馴染みの和風居酒屋や和食レストランでも、お酒が入ると1人当たり平均、2000〜3000バーツ(約7000円から約1万円)もする。
(中略)
日系スーパーで買い物をすれば、「日本では、1袋400円のみかんが800円(10個入)、1個90円のりんごが200円、1匹100円の秋刀魚やいわしが500円、豆腐や納豆も1パックが300円ほどで、1回の買い物に毎回最低1万円はかかる。
日本食レストランや日系スーパーの価格はさすがにバンコクでも特別であるとしても、こんな物価であるなら、さぞ給料も上昇してるに違いない、何なら日本に近付きつつあるのではないか、と思って調べてみた。
本当は以前書いた記事みたいに国別のデータとか取得できると良いのだけど、タイはOECD未加盟なので、今回は、ずばりタイの給与に絞って調べることとした。
「Thailand average wage」でGoogle検索するとすぐ見つかる。
年 | 職業別の給与(米ドル/月) | ||||||||
Total | 議員・管理職 | 専門職 | 技術士・技術士補 | 事務職 | サービス業・店舗販売員 | 農林・漁業労働者 | 熟練工・関連職 | 機械工・組立工 | |
2001 | 193 | 664 | 495 | 305 | 258 | 168 | 86 | 135 | 155 |
2002 | 191 | 704 | 503 | 308 | 259 | 165 | 84 | 133 | 162 |
2003 | 196 | 739 | 533 | 323 | 254 | 165 | 91 | 135 | 164 |
2004 | 201 | 770 | 552 | 341 | 258 | 170 | 95 | 138 | 162 |
2005 | 213 | 690 | 633 | 369 | 278 | 175 | 94 | 149 | 167 |
2006 | 227 | 669 | 628 | 368 | 294 | 186 | 118 | 156 | 180 |
2007 | 229 | 668 | 624 | 379 | 296 | 194 | 124 | 157 | 184 |
2008 | 271 | 777 | 691 | 445 | 325 | 210 | 235 | 195 | 202 |
2009 | 252 | 743 | 695 | 408 | 318 | 203 | 130 | 173 | 199 |
2010 | 260 | 765 | 711 | 414 | 314 | 222 | 142 | 179 | 205 |
2011 | 279 | 805 | 618 | 438 | 324 | 248 | 188 | 196 | 212 |
2012 | 316 | 808 | 678 | 542 | 367 | 267 | 178 | 221 | 237 |
2013 | 350 | 901 | 725 | 553 | 391 | 287 | 189 | 259 | 275 |
2014 | 380 | 899 | 741 | 569 | 406 | 313 | 192 | 283 | 293 |
2015 | 394 | 964 | 765 | 569 | 428 | 325 | 172 | 300 | 304 |
2016 | 401 | 1000 | 790 | 592 | 445 | 325 | 169 | 293 | 308 |
2017 | 399 | 885 | 786 | 611 | 443 | 329 | 197 | 302 | 309 |
※出典:Bank of Thailand EC_RL_018 Average wage classified by occupation
※各年のQ1の月収を抽出後、バーツを米ドル換算して整数に四捨五入(17/7/19時点のレート、1ドル=0.029727バーツ)
※職業名称は「国際標準職業分類」をベースにやや分かり易く和訳
一部データを抜粋してグラフにするとこんな感じ。縦軸は米ドル/月だ。
平均の給与をみると、2001年からの16年間ではほぼ2倍、2011年からの6年間では1.43倍になっており、上昇率は確かに高いが、2017年時点の平均月収は400ドルと、日本の給与と比べるとまだあまり高くないことが分かる。
統計局ホームページによると平成28年の日本の事務員の平均月収は32万9千円なので、タイの平均月収は日本の事務職のざっくり8分の1といったところか。
確かに本データはタイ全土の平均なので、例えばバンコクならもっと高いということもあり得るかもしれないけど、それでも恐らくバンコクに集中していると思われる「議員・管理職」の平均月収である900ドルを抜くということはないだろうと思う。
この結果を見ると、先の記事の物価の例とどうも紐付かないのだけど、さすがにちょっと言い過ぎでは? というコメントも見つかったので、移住者に警笛を鳴らすために、やや極端な例を出したのだと捉えておこう。
しかし、最初は日本語でタイの平均年収を調べていたのだけど、各々のサイトでかなり異なった値を掲載していて焦った。10万円以上と言ってるサイトがあったりするのだけど、出典元が載ってなかったり、出典元を辿ってもそもそも最近のデータがなかったりして、いったいどこからそんな値が出てきたのかは未だに謎だ。統計データが集めにくいものこそ鵜呑みにしないよう注意が必要ということか。
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