WealthNaviへの世間の注目が集まっている中、僕もサービスの中身については結構詳しく調べてみたけど、そういえば起業家や起業の経緯については調べてなかったな〜と思い、小1時間記事を読み漁ってみた。
ベンチャーのサービスや製品を利用する時って、企業自体が信頼に足るのかCEOの経歴とか起業の背景とか、よく調べたりするんだけど、何故かWealthNaviはそんな手順は踏まなかったな。サービス自体が明瞭で真摯だからだろうか。
で、調べてみるとCEOの柴山氏はかなり好感の持てる方で、起業の背景もとても理にかなったものだった。これはWealthNaviに対する好感度が更に上がったわ。
参照した記事は以下の通り。経歴の表も含めコピペはしてないけど、何かあれば修正・削除待った無しです。著作権が気になるので柴山氏の顔写真も当然載せません(※トップの画像はWealthNavi公式HPより)
・DODA:財務省、マッキンゼーを経て起業 千差万別の金銭感覚からわかったこと
・TECH::CAMP Blog:「マッキンゼーの支社長にもプログラミングをやるべきと言われた」 10兆円のリスクマネジメントを経験したFinTech起業家が非エンジニアから5週間で生み出したサービス
・@IT:「FinTechは日本発」、ウェルスナビCEO 柴山氏が語る金融とテクノロジー
・CNET:資産運用を“富裕層だけ”のものにしない–「WealthNavi」が6億円を調達
・AXIOM:注目企業インタビュー
経歴の表がなかったので文章から作成したけど、間違いがあったらごめんなさい。
2000年 財務省(大蔵省)に入省
銀行の不良債権問題に取り組む
ハーバード・ロースクール修士号取得
ニューヨーク州弁護士資格取得
2006年 イギリスの財務省に出向
2008年 出向から戻る
NISA制度の設計に携わる
2009年 財務省を退職
2009年 フランスのINSEAD(ビジネススクール)でMBAを取得
2010年 マッキンゼーに入社
ウォール街の機関投資家のための資産運用のシステム刷新に携わる
2015年3月 マッキンゼーを退社
2015年4月 ウェルスナビ株式会社を設立
しかし、書き並べてみるとものすごい華々しい経歴。
こりゃ「お金を預ける」人としては信頼できるけど、庶民の心とか分からない人じゃないか・・・と思っていたら全然そんなことのないエピソードが出てくる。
- 公務員時代は留学に向けたローンのためにお金がなく、560円の和定食か470円のA定食にするかで悩んでいた
- 財務省の退職後、転職活動がうまくいかず、20社くらいに応募して落ち続けた
- マッキンゼーの入社が決まる前はお金が底を尽きかけていて、スタバのコーヒーをシェアして飲んでいた
- マッキンゼー時代は仕事でのファーストクラスやスイートルームの利用も多かったが、マッキンゼーというブランドが離れた途端に消えてしまう金メッキであることを自覚していた
なんか凄く庶民的。本物の投資家は合理的ゆえに、普段の生活は無駄や贅沢を排して逆に質素、という話も聞いたことあるけど、こういう人なら庶民の心も十分に分かってくれてる(というか既に庶民的)はず。
ざっくり書くとこういう流れのようだ。
- マッキンゼーで機関投資家向けの資産運用のベストプラクティスや知見を学ぶ
- 新興国へ資産運用の仕組みを展開していこうとする話の中で、日本の資産運用が先進国で唯一遅れていることに気付く
- プライベートバンクの運用内容がETF(上場投資信託)中心で個人でもできそうであることを知る
- ウェブや金融インフラのパーツを使えば個人向けにも同等のサービスが提供できるのではないかと思い立つ
- プログラミングを学び5週間でWealthNaviのプロトタイプを完成させる
マッキンゼーで機関投資家向けの資産運用のプロジェクトに携わった際に、富裕層だけが受けられる資産運用のサービスに触れたことがきっかけという。
どうも、マッキンゼーやゴールドマン・サックスには資産運用の専門家の集団がいて、巨額の資産がある機関投資家は彼らからアドバイスを受けられるようだ。個人でも資産が3億円以上あればプライベートバンクから個々のニーズにあった資産運用サービスを受けられるとのこと。この3億円というのは1%の手数料をもらって何とか採算の取れる金額で、例えば数千万円だと手数料が数十万円しかとれず割りに合わないため、どうしても富裕層限定のサービスになってしまう模様。
とはいえ、資産運用は「最終的には数式の世界」であるのだから、金額の多寡には関係ないはず、と柴山氏は考え、本来は誰もが同じようなサービスを受けられるべきではないかと思い始めたようだ。そんな時に、義理の母親から自身のプライベートバンクの運用内容をチェックして欲しいと依頼された。調べてみたところ実に「真っ当で良質な運用」をしており、その運用内容がETF(上場投資信託)中心であったことで、個人でもネット証券を使って十分できる範囲であることに気付く。
そこからは素早く、3月にマッキンゼーを退職して4月にウェルスナビを設立し、日本の資産運用が遅れていることを知っているエンジェル投資家から資金を集め、プログラミングキャンプに参加して5週間でWealthNaviのプロトタイプを完成させ、翌年の1月から招待制のサービスを開始して、7月に正式リリース。16年1月にサービスを開始してるのに15年の9月までは一人だったというから驚きだ。
ここからは蛇足だけど、ちょっと興味深かったので補足。
世界の標準的な資産運用は「リスク管理」を基礎にしていて、最初に基本形となるポートフォリオ(資産配分)を構築した後で、運用のマネージャーが多少の重みづけを行いながら国やセクター、銘柄を選定しているという。
銘柄選定はスパイスであり、最初のポートフォリオの構築の部分で8〜9割の運用成績が決まるといわれているそうだ。一方で、日本ではプロもリスク性の高い個別銘柄やFX中心の資産運用を行なっており、リスク管理が行われていない。
そんな状況なので、日本人は投資に対してギャンブル性が高いと考えていて、その結果、1400兆円の半分が預金として眠っており、投資信託の平均保有期間もわずか2年という、先進国としては異例の状況にある、と。
ギャンブルではない、リスク管理をベースとするサービスを提供することで、安心して資産を運用してもらいたい、そういった想いが柴山氏にはあったようだ。
資産運用の最初の8〜9割がポートフォリオの構築で決まるということ。そして、この個人のニーズにあったポートフォリオの作成は莫大な手数料をとらないと採算が合わないサービスであること。この事実を知った上で、WealthNaviのサービスを見ると目を疑う。
公式HPには「あなたに最適な運用プランを無料診断する」というボタンがあって、進んでいくと質問の回答に応じてリスク許容度を判定し、国内外の株式、債券、金、不動産に対するポートフォリオを提示してくれる。
これ、安価どころではなくて、無料で診断してるじゃん!
何かロボットアドバイザーとかAI投資とか聞くと、売買の自動化にばかり目が行きがちだけど、WealthNaviの最大の価値はこの最初のポートフォリオの作成にあったのではないかと。柴山氏がプログラミングキャンプで作り上げたというWealthNaviのプロトタイプが、まさに、質問に回答するとアルゴリズムに従いポートフォリオを提示するというサービスだ。その後の自動売買とか積立機能は付随機能だったのだ。
ポートフォリオだけ作ってもらってETFは自分で買えばいいじゃん、とか記事を書いてしまったけど、これはもう少しありがたがって紹介しないとな、と思わされたまとめ作業でした。
コメント
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